老後の一人暮らしで賃貸だと生活費が高すぎる…今からできる生活防衛
老後の一人暮らしで賃貸の生活だったら、生活費が足りなくなって、貯金を切り崩す可能性が高くなります。
「私は既婚だから大丈夫、持ち家だから賃貸にもならない」と思っている女性がいるかもしれません。
しかし平均寿命は、女性の方が男性よりも6年長いので、夫に先立たれてしまう可能性が高いのです。
今は実感がわきにくいでしょうが、生活費などは老後になってみないと予測できないことも多々あります。
いずれ一人暮らしになるという覚悟が、あるのとないのでは、これからを生きる姿勢や準備も変わってくるのではないでしょうか?
この記事では、老後の一人暮らしにかかる生活費の予測、賃貸だとどうなるのか、持ち家なら安心とは言い切れない理由などを考えていきます。
老後の一人暮らしで賃貸だと生活費の不足は+4万円
2019年には「老後2000万円問題」が世間を騒がせました。
これは金融庁・金融審議会の報告書で「老後30年間で約2,000万円が不足する」という試算が出たことから端を発しました。
2000万円という言葉が衝撃的で、独り歩きしていますが、この問題の事実としては次のようになります。
- 2017年における平均寿命は男性81.1歳、女性87.3歳で、退職後30年近く生きる
- 2017年の高齢夫婦世帯(夫65歳以上、妻60歳以上・夫婦のみ・無職)の毎月赤字額平均値は約5.5万円
2021年現在の平均寿命は、男性81.73歳、女性87.74歳とのびており、夫に先立たれた妻が一人暮らしになるケースが考えられます。
実際、2019年の65歳以上単独世帯の割合は28.8%となっており、高齢者の単独世帯は年々増加しています。
また毎月赤字額とは、実収入から実支出を引いたもので、次の試算に基づいています。
【2017年の高齢夫婦無職世帯】
平均 |
実収入 209,198円 |
実支出 263,718円 |
内訳 |
社会保険給付191,880円 勤め先 4,232円 事業収入 4,045円 その他 9,041円 |
食料 64,444円 住居 13,656円 光熱・水道19,267円 家具・家事用品 9,405円 被服・履物 6,497円 保険・医療 15,912円 交通・通信 27,576円 教養・娯楽 25,077円 その他の消費支出 54,028円 非消費支出 28,240円 |
出典:厚生労働省
毎月5.5万円になる生活費の赤字もさることながら、こちらの資料で注目すべき点は、住居費が13,656円であることです。
賃貸で1.5万円以下の物件はそうそうありません。この世代は持ち家率が8割超えていて、ローンも払い終えているのが基本なのです。
それでも住居費がゼロにならないのは、固定資産税、もしくはマンションの修繕積立金などがあるからということになります。
老後一人暮らしの生活費
60歳以上の単身無職世帯だと、実収入が124,710円、生活費は139,739円なので27,090円の赤字となっています。
つまり夫婦二人よりも一人暮らしの方が、生活費は割高になってしまいます。老後はできるだけ二人以上で住むべきです。
2019年総務省の調査によると、一人暮らしする65歳以上・女性の持ち家率は85.9%です。
一人暮らしで持ち家がない14.1%の方は、賃貸に住んでいます。2018年の総務省の調査によると、家賃平均は1か月当たり5万5,695円となります。
つまり持ち家がある一人暮らし女性と比べて、賃貸の人は月4万円以上多く生活費を見積もっておく必要があるのです。
もっと具体的にいうと、4万円×12ヶ月×30年=1,440万円が上乗せになるわけですね。
老後に一人暮らしの賃貸だと保証人問題が出てくる
連帯保証人の問題
老後も賃貸だと生活費がかかるという以外に、賃貸を探すときには「連帯保証人」が見つからないという問題も出てきます。
連帯保証人には、万が一の場合に借主に代わって支払いができる程の収入があることが求められます。
そのため老後の一人暮らしでは、連帯保証人を頼みたいときに身寄りがなかったり、子供に頼むのはちょっと…という場合が出てきます。
入居を拒否される問題
また高齢者で一人暮らしの方は、大家さんや管理会社から入居を断られる場合もあります。高齢者の入居が拒まれる理由には、以下の事情があります。
- 孤独死を防ぎたい
- 年金暮らしのために家賃滞納される可能性がある
高齢者だとこういったリスクがあるからです。65歳以上の方には実際に、4人に1人が入居を断られた経験があります。
R65不動産によると、賃貸住宅の入居を断られた人は全国で23.4%、5回以上断られた経験がある人は13.4%に上るそうです。
しかし最近では老後の一人暮らしが増えていることもあって、状況も変わってきました。
その場合に使えるのが「保証会社」の利用です。入居者が保証会社に保証金を支払えば、保証会社が連帯保証人の役割を務めてくれます。
また2007年に「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」が制定されました。
こちらは、高齢者を「住宅確保要配慮者」として高齢者向け賃貸業者への登録で優遇措置がされるようになりました。
高齢者向けの不動産会社
そんな世間の流れの中で、高齢者の賃貸を重点的に扱う不動産屋さんも出ています。
- UR賃貸住宅
- R65不動産
また60歳以上で介護を必要としない場合は、バリアフリー対応の「シニア専用賃貸マンション」も登場しています。
高齢化が進んで、高齢者にも積極的に貸すようにしなければ、賃貸住宅経営自体が成り立たない時代が来ているのかもしれません。
老後の一人暮らしには賃貸より持ち家が安心って本当?
持ち家のデメリット
先に書いたように、住宅ローンを払い終えていれば、賃貸より持ち家の方が費用がかかりません。しかし持ち家のデメリットは存在します。
- 経年劣化に応じた家のメンテナンスが必要になること
- 固定資産税・都市計画税がかかること
- マンションの場合は修繕積立金や駐車場がかかること
それ以外にも老後は「健康上の問題」で、持ち家を持っていても、そこに住み続けることができない場合があります。
介護が必要となったのに、持ち家ではバリアフリーではなく老朽化が進んでいる。それでもリフォーム費用がなかった場合は、住み替えを考えると思います。
また老後は、運転に不安を持ち車を手放す人が多いと思います。郊外だと車がないと不便なため、便利な都市部に住み替えたいと思う方もいるでしょう。
それで持ち家を売ろうとしても、家が古いためなかなか買い手がつかず、安く買い叩かれることが多々あります。
すると売却資金で住み替えを考えていたのに、あてが外れてしまいますよね。
老後のリスク対策
つまり老後一人暮らしになると、賃貸でも持ち家でもリスクが存在するのです。では老後に向けて、今からできる対策はないでしょうか。
では老後一人暮らしになる前に今からできる対策を3パターンに分けて考えてみましょう。
- 家をリフォームしやすい構造にしておく(トイレや廊下を広めにしておくと車椅子にも対応可能)
- 学校や商業施設、病院近くの物件だと、住み替え時も資産価値が落ちにくい家になる
持ち家はあっても老後資金が不安である場合、「リバースモーゲージ」という制度があります。
このリバースモーゲージは、住みながら家を売ることができるのですが、資産として家を残せないので、世間にあまり認知されていません。
しかし家を残す子供がいない場合は、この制度を使って老後資金を作るのも一つの手だと思います。なおマンションには対応していません。
そういう点でも、一戸建ての持ち家を持つこと自体が、老後一人暮らしへの対策の一つになります。
- マンションが古くなると、修繕積立金が上がったり、住人が減ってスラム化する可能性が高いため、そうなる前に住み替えを考える
- 駅近くなどの、車なしで済むような立地のマンションを選ぶ(駐車場代も要らない)
マンションの場合は立地条件が良ければ、高く売れる可能性がありますね。
- 現役時代から家賃が低めの物件に住む(住宅費を節約して老後資金確保、老後もできるだけ同じ物件に住めるように)
賃貸は持ち家と比べて、初めに資金を用意する必要がなく、何かトラブルが起これば引越しできる気安さがあります。
その代わりに死ぬまで家賃を払う必要があるので、現役時代から個人年金保険やiDeCoなどを使ってお金は貯めておきましょうね。
まとめ
- 平均寿命は年々寿命が延びていて、女性の方が6年長生きする
- 65歳以上の人がいる世帯で、単独世帯の割合は28.8%である
- 60歳以上の単身無職世帯だと、生活費は毎月27,090円の赤字になる
- 賃貸だと生活費が+4万円上乗せになる
- 老後に賃貸だと、連帯保証人が見つからない、入居を断られる可能性がある
- 持ち家だからといって、介護されるようになったら安心とも言い切れない
- 一戸建ての持ち家だと、老後資金にリバースモーゲージの制度が使える
- 老後に一人暮らしになる可能性を現役時代から考えておく
今回は老後の一人暮らしで賃貸だと、生活費が足りなくなるという問題を取り上げました。
確かに賃貸より持ち家の方が、老後の不安は減ると思いますが、ずっと持ち家に住み続けることができるかは分かりません。
家の問題もさることながら、いざというときに助けてもらえる人脈作りや、制度を知っておくなどでも対策になりますよ。
誰もが不安を抱える老後ですが、一人暮らしであっても充実した毎日になると良いですね。
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